『きいろいゾウ』@渋谷HUMAXシネマ

昨日より公開の映画「きいろいゾウ」を観て感じたことを、ざっくりと。

全体を通して、人と人との「支え方」が印象的だった。
まず、毎日ツマに支えられているムコ。
まわりの生物の声が聞こえ、ムコの不在時それらに支えられるツマ。
ご近所の夫妻の支え合い。
かつてムコと心を寄せ合っていた夏目と、その夫の、妻を支えたいという想い。
様々な形で、その人なりの支え方、ひいては愛の表し方や感じ方が描かれている作品だと感じた。

はじめにグッときたシーンは、海に向かう車中でツマが泣き出し、そのいたたまれないところでムコがやさしく声をかけた場面。
それまで、ツマの嫉妬にも似たやりきれなさが爆発していたのに
(それを汲んだのかどうかはわからないけれど)ほだしてあげたムコの優しさは素敵だと思う。

次にグッと来たのは、男の子がツマヘラブレターを差し出したシーン。
好きな人のために変わりたいという気持ちが文面にすごく素直に綴られていたと思う。
ああいう純朴な気持ちを抱いてもらえるの、きっと女の子は嬉しいと思う。

あとは、亡くなった人に対する思いが崩壊してムコが泣いてしまい、それに対して何もできない歯がゆさや、そんな自分への情けなさ、そして慈愛からのツマの抱擁の場面。
ここは泣いてしまった。あれに似たことがかつての自分にもあったからかな。

蛇口のシーンは強烈だったし、他にも端から見ると病んでるの?と思える場面もあったけど、なんていうか、届かない想いについてそれなりに重きを置いていて、それをいろんな形で示しているのが印象的だった。

宮粼あおいは常日頃ナチュラルさ漂う女優さんだけど、今回は更にナチュラルさに磨きがかかっていると共に、ゾッとするような狂気な表情が多かった。
余計好きになったけどさ。
向井理は素朴で終始いい人そうな役回りだったけど、この人はそれでも存在感があるからうらやましい。

全編、劇的な転調がある作品ではないけれど、まったりと時間が流れる作品が好きな人にはおすすめです。

きいろいゾウ (小学館文庫)
西 加奈子
小学館
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